2021年の夏頃から一般人の接種が始まると言われている「新型コロナ」のワクチン。
このワクチンについて、リスクを訴えて「接種すべきでない」という人もいれば、「接種を急ぐべきだ」という人もいて、日本では「恐れ」と「期待」が蔓延している状況の様です。
−ワクチンを接種した場合の「リスク」とは何か?
−接種をしなかった場合の「リスク」は何か?
自分で接種をする前に、最低限の知識が欲しいと思い『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』を読みました。
この本の著者は、アメリカの国立研究機関の研究員且つ博士です。
面白いのは、ワクチンの接種を推進も反対もせず、数字に基づいた事実を並べ、最終判断は読者に委ねているところ。
この記事は『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』を要約し、数字に基づいた事実を書いています。
この記事が、あなたのワクチン接種の判断材料になれば幸いです。
仮に日本中がワクチン接種を拒んだ場合、コロナ終息までに100万人の死者が出る理由とは?
前置きが長くなってしまいましたが、本題に入ります。
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参考【新型コロナワクチン 本当の「真実」】の要約と感想_免疫学の第一人者の意見とは?
免疫学の第一人者として広く知られている宮坂昌之さんが著者の新書【新型コロナワクチン 本当の「真実」】を要約し、感想を書きました。 新型コロナワクチン 本当の「真実」 (講談社現代新書) ワクチンに対す ...
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新型コロナのワクチンとは?
新型コロナのワクチンは「RNA」という最新のワクチンで、コロナで初めて実用化されました。
「RNA」を簡単に説明すると、遺伝子(DNA)の一部を体内の狙った場所に送り込むことで免疫を作るというワクチンです。
従来の伝統的なワクチンは、ウイルスを弱らせたり(生ワクチン)、ウイルスを殺したり(不活性ワクチン)、死んだウイルスを人工的に作ったり(組換えワクチン)したものを体内に入れることで免疫を作っていました。
つまり、従来のワクチンは、ウイルスを体内に入れることで免疫を作ってきたのに対し、「RNA」はウイルスでなくDNAを体内に送り込むのですから、従来と全く異なるワクチンだということがわかります。
(「RNA」について、もっと詳しく知りたい方は「ライフサイエンス」の「RNA」へ)
問題視されている理由
新型コロナの最新ワクチンは「RNA」は、本来10年の歳月を費やして実験検証を行い、実用化する予定のワクチンでした。
しかし、新型コロナが猛威を振るい、このワクチンを急ピッチで実用化する必要があった為、たった1年の実験検証期間で実用化に踏み切ったのです。
理論上や動物実験上は「問題が無い」とされている「R N A」。
人間に接種しても「問題が無い」と判断するためには、圧倒的に実証が少ないことは否めず、この点を問題視する人が多いのです。
「伝統的なワクチン(生ワクチン・不活化ワクチン・組換えワクチン)」であれば、リスクを予測できますが、この「新世代ワクチン」はリスクを予測しきれないのです。
新型コロナワクチンの副反応
最も多い副反応は「注射した場所が痛くなる」、次に「発熱する・倦怠感やだるさを覚える」
この2つは、いずれも命に別状の無い副反応です。
命に関わる副反応は「アナフィラキシーショック(拒絶反応)」ですが、この発生率は0.0005%。
つまり、100万人に5人です。
ワクチン反対派の多くは、この「アナフィラキシーショック」による副反応を懸念していますが、「アナフィラキシーショック」が起きたとしても、医療関係者が迅速に対応をすれば命に別状が無いことが多いそうです。
数字で示すワクチンの必要性
コロナのワクチンの「リスク」が分かったところで、ワクチンの「必要性」について、数字に基づいて説明します。
「致死率」「再生産数」「集団免疫率」とは
ワクチンの必要性を理解する上で必要な数字は「致死率」「再生産数」「集団免疫率」の3つです。
それぞれを簡単に説明すると次のようになります。
コロナ =2%
SARS=10%
MARS=35%
インフル=0.02%(先進国)
SARSやMARSと比べるとコロナの致死率は低いのですが、ここがコロナの怖いところだと言います。
致死率が高ければ、感染後すぐに重症化するため、感染したらすぐに病院に行きます。
結果、感染拡大を防ぐことができるのです。
実際に、SARSは僅か8ヶ月間で終息に成功しています。
しかし、致死率が低いコロナは、感染をしても無症状や軽症の人が多数いるので、病院に行かない感染者が多く、感染が拡大するのです。
「致死率が低い」といっても、インフルエンザと比較すると100倍の致死率があるのも怖いところ。
コロナ =2人
SARS=2人
MARS=2人
この本では、コロナの脅威は「致死率」と「再生産数」の絶妙な数字だと言っています。
コロナと同じ「再生産数」のSARSやMARSは症状が明確なので対策が取り易かったそうですが、コロナは潜伏感染者が多いので感染拡大の対策が取りにくく、ここまで長引いているのです。
つまり、日本人の何%が免疫を持っていればコロナが終息するか
集団免疫率=1−1/再生産数
コロナの場合=1−1/2=50%
つまり、日本の人口の50%が免疫を持てばコロナは終息します。
ワクチン以外でコロナを終息させるには
前述の通り、日本人の50%が免疫を持てばコロナは終息します。
仮に、日本中がワクチンの接種を拒み「自然免疫(感染後の免疫)」で集団免疫率を50%まで上げようとしたらどうなるのでしょうか?
日本の人口を少なく見積もって1億人とした場合、「集団免疫率」を50%にするためには5千万人がコロナに感染すればコロナは終息する計算です。
ただし、前述の通りコロナの「致死率」は2%なので、感染した5千万人のうち100万人は死にます。
つまり、「自然免疫」でコロナを終息させるには100万人の命を犠牲にしなければいけないのです。
現在、世界最大のコロナ被害国であるアメリカは死者数が50万人(2021年2月時点)なので、その2倍の死者を出さないと「自然免疫」による終息は無いということです。
ワクチンを拒み「自然免疫」だけでコロナを終息させるにはあまりにも犠牲が多いと言えます。
他国と日本のワクチン接種状況
ワクチンは2回接種することで効果があると言われています。
日本は2回接種が完了している人は95万人、人口比率で0.8%です。(2020年4月末時点)
シンガポールは15%、イギリスは20%、アメリカは30%なので、日本の2回接種率はまだまだ低いと言えます。
前述の通りコロナの「集団免疫率」は50%なので、アメリカはあと20%の人がワクチン接種によって免疫を持てば、コロナは終息するのです。
人口の50%がワクチンを接種すれば強気に経済活動が回せると言われているそうです。
他国がワクチン接種率50%を達成し、旅行・物流・経済が回り始める中で、仮に日本が取り残されてしまった場合、日本は大きな経済打撃を受けることになるとのことです。
例えば、旅行先で日本はNGになったり、日本から食べ物を輸入するのはNGになったり、ということが起こりうると書かれていました。
最も恐ろしい日本の未来とは
日本人は他国よりもリスクを恐る傾向にあるため、著者は日本人のことを「ゼロリスク志向国民」と書いています。
「ゼロリスク志向×インフォデミック(誤情報の錯綜)」が起きたとき、コロナの恐怖から信憑性のない特効薬に飛びついてしまうような状況が起こる可能性があるとのこと。
そうならないためにも最低限の知識(コロナのワクチン・集団免疫など)を身につけた状態で他の情報に触れることを勧めています。
また「これだけやれば大丈夫」という考えは持たないようにと警告しています。
医療のプロである著者が言えることは「マスク・手洗い・換気などの非常に地味な取り組みを長く継続すること」だそうです。
コロナとは長い長い戦いになるので、情報収集とデイリーケアを怠らないことが重要だと言います。
最後に
ワクチン接種について、個人の判断と集団免疫のどちらを優先するかは、皆さんの自由だと思います。
個人の判断をする場合、副作用が怖いから、もう少し様子を見てみるということでも全然良いと思います。
長い実用実績のある「伝統的なワクチン(生ワクチン・不活化ワクチン・組換えワクチン)」の開発も進んでいるそうなので、その普及を待つという選択もあります。
私は、ワクチンへの「期待」と「恐れ」が蔓延している現在の光景は、コロナが流行した当初の「楽観」と「恐怖」の蔓延によく似ていると思います。
コロナは、極度に怖がり過ぎると何もできないし、楽観視をし過ぎると感染してしまうことから、「正しい情報をインプットして、正しく怖がること」が重要だと考えていましたが、この本を読んで、ワクチンも全く同じだと思いました。
これからも、正しい情報をインプットした上で、ワクチン接種についてゆっくり考えたいと思います。